タイムマシン


「お父さんとお母さんどっち似?」という定番の話題がある。私は母似だ。

去年の私の誕生日に父がこんなことを言っていた。

「お父さんがお母さんと知り合ったのはお母さんが19歳の時やったから、お母さんと出会っまでを見て きた気分やわー。」

 

私の父と母は20年前に結婚した。8年間の交際を経ての結婚だったため、 そろそろ30年近く一緒にいることになる。ふたりは今でもとても仲が良い。 おしどり夫婦というよりは、長年の良き友といった感じだ。

父と話すとき、母 は楽しそうに話す。父もいつも楽しそうに母の話に耳を傾けている。そんなふ たりを見ているのが私は好きだ。

 

私には付き合って半年になる彼氏がいる。付き合った当初の私は19歳。母 が父と付き合いはじめたのと同じ年だ。父と母にもこんな時代があつたのかと思うと、不思議な気持ちになった。専門学生の父と女子大生の母。

ふたりはど んな街で出会い、どんな服を着て、どんな話をして、どんな顔で笑いあったのだろう。どんな風に恋に落ちたのだろう。

 

タイムマシンに一度だけ乗れるとすれば、私が行きたいのは1988年だ。

当時、母19歳、父20歳。付き合って間もない両親をこの目で見てみたいの だ。きっとそこには、初々しい、でも今と変わらないふたりがいるはずだ。そして、ふたりが青春の日々を過ごした当時の街をこの足で歩きたい。椅麗だね と言い合った夜景を見てみたい。

 

ふたりに素性を明かさず近付いてどうしても聞いてみたいことがある。どちらから告白したのか だ。

私は事あるごとにそれが気になって訊ねてはいたが、 父も母も、覚えてないと言って教えてくれない。同年代の他人にならば教えてくれるだろう。

 

ついでに、子供にはピアノを習わせてあげてあげるように言って帰ろうと思う。

私が20年間の人生の中で唯一晦やんでいるのが、ピアノを 習いたいと言わなかつたことだ。子供どころか結婚もまだ考えていないであろうふたりはどんな反応を見せてくれるのだろうか。私が知っているふたりと変わらなかつたらいいなあ。