化粧の話

どうやったらアイシャドウを落とさずに目を擦れるのだろう

どうやったらノーズシャドウを拭うことなく鼻をかめるのだろう

そんなことを考えるようになったのは、つい1ヶ月ほど前のことだ。

 

学部にはサークルと全く関係のない友達がいる。彼女らはみんなきちんと身だしなみを整えていて、休み時間になるとトイレの鏡の前に並んでお化粧を直す。

私はその奇妙な光景を受け入れられず入学当初から頑なに不参加の意思表明を貫いてきたが、1ヶ月前、

「今井さんはもう20歳でしょ?ちゃんと(お化粧)しないとだめだよ??」

なんて言われてしまった。

 

それからは渋々ではあるが、まずは休み時間に紅を引き直すことから始めてみた。

頻繁にパウダールームに行くようになって分かったのは、そんなこととっくにしていた人がもう何人もいたということだ。

お化粧が上手い集団に囲まれながらンマンマするのは1ヶ月経った今でも未だに緊張する。

なんでお前みたいなのがこんなところにいるんだ、みたいな、

私が「リード歌うならもっと細かいとこまで練習したらいいのに…」と思うようなことを思われているに違いない、と勝手な思い込みから肩身を狭くしている。

 

化粧はおそらく、自分のためにするものだ。

自分を社会に出すため、それにふさわしい人間に仕立て上げるためにするのだ。

目や鼻に影を入れ、不透明な肌には塗装を施して「透明感」を出す。そうやって繕って、はじめて社会に出て行く資格を持つ。のだと思う。

誰に文句を言うこともできない。社会が、マジョリティ様がそうなのだからそれに従うまでだ。

 

マジョリティ信者になることは、個の死を意味すると思っていた。個性を失ってモブになることを何より恐れていた。それほどまで私には自信が無いのだ。

 

あぁ、できることなら歌のことだけ考えていたい。

いいねって言ってくれる人のためにだけ歌っていたい。

歌は私の顔だ。今の彼氏だって歌がなければいなかった。

でも、化粧ができない女が歌う「化粧/みゆき」なんて、きっと童貞がセックス語るようなものだ。詐欺罪で訴えられかねない。私はまだまだ、電車の中でずるずると鼻をかみ、保湿ティッシュをノーズシャドウで茶色くするような女だ。化粧をして歌が上手くなるのなら、ちょっとは頑張ってみようと思えなくもないような気がしてきた。

 

文体はこっちのほうが描きやすいな〜〜

 

口紅塗ってバイト戻ります。